日比経済連携協定に関する見解(抜粋)なぜ看護師たちは日比EPAに反対しているのかリア・プリミティバ・サマコ-パキス(博士) フィリピン人看護師は、アメリカで働く外国人看護師の大多数を占めます。ヨーロッパや中東でも多くのフィリピン人看護師がおり、世界一の看護師であるとの名声を得ています。こうした私たちの提供する医療の質や私たちの能力が世界から認められるようになったのは、フィリピンにおける質の高い看護教育によります。 一方でフィリピン政府は、フィリピン人看護師の自尊心、尊厳、プロフェッショナリズムを擁護する義務を帯びています。 従って、私たちフィリピンの看護師は、目下、日比EPAにおいて示されている日本の申し出を丁重に断る所存です。私たち看護師は、日比EPAはフィリピン人看護師のプロフェッショナルとしての資格を十分に認めず、日本での職に無意識にも誘惑された者を、酷使・差別にさらしかねないものと強く感じております。 日本の看護師も日本の看護は改革が必要と認識フィリピン人看護師は、フィリピン人看護師受入れの前に日本人看護師の労働条件、給与、福利厚生の改善・改革が必要、との日本看護協会の公式見解を十分に考慮したうえで、日比EPAの否決を訴えています。 日本政府は、フィリピン人看護師の労働・受入れ条件を整える前にまず、日本人看護師の労働条件の改善を図るべきです。 差別日比EPAは私たち看護師にとって不公平なものです。日本は庭へのドアを開けたと思ったら、玄関の鍵を二重にかけたようなもの、といえるでしょう。日比EPAの不平等な条件の下では、フィリピン人看護師は日本人看護師と同じ地位を得ることはできないでしょう。 インドネシアの看護師は、日・インドネシアEPAの下、私たちよりも良い条件を得ています。インドネシア人看護師は、3年間の看護教育、2年間の看護経験があれば、インドネシアの看護師国家試験を受かっていなくとも日本に入国できるのです。 それと対照的に、フィリピン人看護師は4年間の看護教育、3年間の看護経験、さらにはフィリピンの国家試験に合格する必要があります。日本は私たちよりもインドネシア人に対して、より良い就業機会を与えたのは明らかです。 看護ではなく看護研修4年間の高等教育を卒業して学位を取得し、フィリピンで資格試験に合格してその能力も証明され、さらに3年間の経験を積んでも、フィリピン人看護師は日本で看護の職に完全に就けるわけではなく、研修生として働くことになります。日比EPAの下では、フィリピン人看護師は日本人看護師の監督の下、日本での資格試験のため、最長で3年間、研修を受ける必要があります。3年の間に合格できなければ、フィリピンへの帰国を余儀なくされます。 フィリピン人看護師は日本で十分な保護を受けないー給料ではなく手当、従業員でも労働者でもなく日本の資格試験に合格していないフィリピン人看護師は、看護のプロフェッショナルではなく研修生として、研修手当しか受け取ることができリスクを負っています。また、従業員としても労働者としても認められないため、日本の入管法の下、ほとんど権利を与えられない可能性もあります。日比EPAには、国際労働機関(ILO)国際中核的労働基準や医療従事者の権利を守る旨の具体的な条項も含まれていません。 また、日本が「差別待遇(雇用及び職業)条約」として知られるILO条約第111号を批准していないのは、日本政府が人種、社会的性差、言語、社会的地位による差別の解決に真摯でないのを示すものです。 他国でのよりよい就業機会フィリピン人看護師は、研修ではなくち「ほんとうの」仕事に就けれることと願いつつ、(日本で)人生の3年間を過ごすことになります。他国では、日本政府が日本人看護師に与えている給与よりも高い給与を享受しつつ、プロフェッショナルとしてやりがいのある仕事に就けるにもかかわらずです。 日本語を話さなければいけないという非現実な要望私たちは、コミュニケーション能力が医療の要であり、日本語能力は看護に従事する際の重要な要件であることを認めます。しかしながら、日比EPAの求める日本語能力は厳し過ぎるもので、越えるえることのほぼ出来ない壁を設けるようなものです。フィリピン人看護師はおそらく、研修生として安価で質の高い医療を提供する労働力となることでしょう。 フィリピンの状況も日本の状況と変わらないフィリピン人看護師が日本人看護師の置かれている状況をみれば、日本もフィリピンと同じような状況に置かれていると気づくことでしょう。 共和国法第7305号(公共医療従事者基本法)制定後も、フィリピン政府は法律で定められた福利厚生の拡大と給与の引上げを行っていません。このことが、私たちが海外での就業を望む大きな要因となっています。 フィリピン人看護師をめぐる国内の状況は決して理想的ではありませんが、日比EPAは彼らに差別的かつ不明確な職業機会を与え、結果としては彼らのものではい(日本の)未来のために、フィリピン人ではなく日本人に奉仕すべく、彼らをひきつけるものです。 フィリピン人看護師は他国に「輸出」され、差別を受け、明確なキャリアパスや安定した職をも得ることができていません。そうではなく、フィリピン人に奉仕するために母国に残って働くことの価値を見出すべきであり、フィリピン政府もプロフェッショナルとしての看護師らを尊重・保護すべきです。 看護師は商品ではない!日比EPAを巡る経済学は、看護師を一緒くたにすべきではありません。この問題は単なる経済変数の流れではないのです。問題になっているのは、グローバル社会でフィリピンという国に誇りを与え続けてきたプロフェッショナルたちなのです。日本において、フィリピン人の看護師を研修生として扱い、職業の安定も明確なキャリアパスもないまま、研修手当のみを与えることは、経済的生産性を高めることになるかもしれません。しかし、こうしたやり方は看護師、フィリピン人の自尊心を傷つけ、プライトを踏みにじるものです。 「乞食は選り好みできない」とよく言います。この言葉は、フィリピン側の交渉チームが私たち看護師のために取り付けてきた、不平等な労働条件の言い訳としてよく口にされます。しかしながら断言できることは、私たちフィリピン人看護師は乞食ではないとうことです。私たちは世界一の看護師であり、私たちのサービスに対する世界からの需要がそれを証明しています。フィリピン政府が、私たちが世界一であるということを信じるのであれば、私たちに本当に見合った労働条件を提供すべきなのです。
翻訳 山田真司 |
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